Library Of Ruina ゲーム紹介
突然だが Library Of Ruina というゲームを御存じだろうか。
割と最近だと有名になりつつある気もするが、未だにマイナーゲーの域を出ていないような気がしてならない。
間違いなく他のゲームにはない魅力がある、個人的には神ゲーなのだが…
というわけで今回はそんな Library Of Ruina というゲームについて語っていきたいと思う。
ゲームシステムの大まかな概要
なんというかここが一番難しいのだが、このゲームを一言で表そうとすると、
同時ターン制に見せかけたイカサマカードバトル
とでも言うような謎の表現をするゲームになると思っている。
似たようなゲームが見つからないため、このような表現になってしまう。
具体的な説明をしていこう。
まずこのゲームはカードゲームの皮を被ったRPGである。
分かりやすく言えば、ドラクエの攻撃、防御、魔法、と言ったコマンドをカードに置き換えたゲームだと思えばよい。
カードゲームらしく、手札の概念等はあるものの、MP使う代わりにカード使って敵を殴るんだな!と理解しておけば間違いはだいたい無いと思う。
次にこのゲームの目的は敵を倒すことである。
うん実にシンプル。
これだけならば分かりやすい。
敵は最大5人まで。
味方も最大5人まで。
ドラクエのようなHPの概念があり、0になったらそのキャラは倒れる。
全滅すると補充が入り、敵もしくは味方が既定の回数全滅すると、そちら側の負け。
ここまでは分かりやすいと思う。
だがここからが問題で、まずこのゲームは同時ターン制である。
つまりお互いが同時に行動をするゲームというわけだ。
RPGの同時ターン制って…?とまずなる。
意味不明である。
先ほどのようにドラクエで例えてみよう。
ドラクエはターン制である。
素早さの順番で味方と敵が順番に行動していく。
必ず決まった順番に行動が行われ、味方の行動、敵の行動は完全に別枠であり、それぞれが相手の行動に直接影響することは無い。(状態異常とかで阻害することはあるが…)
だが、この Library Of Ruina というゲームはそうではない。
味方の行動と敵の行動が同時に行われ、それぞれの行動が相手の行動に直接影響を与えるのだ。
スライムの攻撃と勇者の攻撃がぶつかり合うシーンが実際に起こるわけだ。
当然強い方が攻撃に打ち勝って敵にダメージを与えていく。
逆に弱い方は攻撃を入れることもままならず、ダメージを受けるだけになる。
つまるところ、攻撃で攻撃をはじく、攻撃に攻撃でぶつかるということが実際にゲーム中で幾度となく発生することになる。
このシステムがあるおかげで、弱い攻撃では強い敵に一切歯が立たないとか、逆に強い攻撃で敵の攻撃を全ていなしてダメージ受けずに勝利する、とかそういったアニメみたいな展開がよく起こるわけである。
実にダイナミックで面白いと個人的には思う。
まあここまではちょっと特殊なRPGなのかなで済みそうである。
特殊なのは確かなので、慣れるまでは時間かかりそうだけど、まだ理解はできる、といったところだろうか。
だが、ちょっと待って欲しい。
最初に書いたこのゲームの概要はどんなものだったか。
そう。
同時ターン制に見せかけたイカサマカードバトル
なのである。
イカサマ、である。
つまりこのゲームは、さも同時ターン制のような顔をして、実は全くそうではない、プレイヤー側が一方的に有利なシステムがゲームシステムとして実装されているのだ。
ここがこのゲームにおける一番面白く、それでいて、理解し辛く、とっつき辛い部分なのでは無いかなと思う。
意味不明だと思うのでもう少し詳細な解説をしよう。
まずプレイヤーは同一ターン中の敵の行動を予め知ることができる。
つまり敵がどんな技を使い、誰に攻撃を行うか予め分かるのだ。
当然プレイヤーは相手の攻撃に合わせて行動を選択できるので馬鹿みたいに有利である。
さらに条件付きではあるものの、敵の攻撃対象を捻じ曲げる、ドラクエで言う「かばう」を意図的に引き起こすこともできる。
このようにプレイヤーは圧倒的な情報アドバンテージを抱えており、まさにイカサマとしか言えないゲームシステムの下、戦闘が行われる。
では Library Of Ruina はヌルゲーなのかというと、全くそうではない。
ゲーム慣れしてない人からすれば、かなり難しい部類であると思われる。
何故か。
前述のシステムアドバンテージがあるのに難しいとはどういうことなのか。
答えはシンプルで、敵が非常に強いのである。
このゲームは、基本的に敵を倒して得た装備を使うことで強くなるシステムである。
しかし敵の強さは、その時の最強装備の一回りか二回り上、という感じである。(例外も当然あるが)
つまりこのゲームは、圧倒的情報アドバンテージを使って、格上の相手を頭を捻って倒すゲームなのである。
RPGでもカードゲームでもあるのだが、本質はパズルに近いと思って差し支えない。
数段強い相手を上手いこと策にハメて撃破していく感覚は格別である。
以上がざっくりとした Library Of Ruina のゲーム性である。
雰囲気は伝わっただろうか。
世界観とストーリー
このゲームを語るにあたって外せないのがもう一つここである。
まずは世界観。
非常に分かりやすく言えば、ディストピアそのものである。
「頭」と呼ばれる組織によって管理された「都市」が舞台となり、そこで人々は「都市」を牛耳る26の巨大企業、通称「翼」で働くことを目標に日々を生きている…と言った感じ。
あれそんなディストピアか?と思うかもしれないが、「都市」の実態は、人命が非常に軽く、非人道的行為が平然とまかり通るこの世の地獄のような場所である。
前述した「翼」に所属することができれば、「巣」という場所で、最低限人間らしい生活は保障されるものの、所属することができなければ、「裏路地」という明日が迎えられるか怪しいことが日常な、危険な場所へと放り出されることになる。
「翼」の実態も非常に醜悪であることがほとんどであり、中では公言できないような非人道的行為が行われていることが常である。
さらに、この「都市」には危険組織、異常な集団、といったものが蔓延りまくっており、常人には理解しがたい死が至る所に転がっている。
さらに言えば、「頭」の敷いた規律を破れば、「頭」による明確な粛清が起こる。
これでもかと言うくらい人命の軽い管理社会なのである。
当然そんな世界なので、人々は自分で何かを行おうとする意志すら削り取られ、日々を生きるためだけに、「都市」の中で生活をしている状態である。
長いのでまとめれば、独裁組織「頭」によって管理された世界で疲弊した人間たちが、その中では比較的マシな超ド級ブラック企業「翼」に入社するためだけに日々を生きている、と言った感じか。
さて世界観としてはかなり大雑把に言えばこのような感じなのだが、ここで登場するのが、 Library Of Ruina の制作元 Project moon の前作である Lobotomy Corporation である。
ゲーム性などは今作とは全く違うものであるので、詳細は省くが、ストーリー部分で今作とつながりがあるため、可能であればプレイをおススメする。(方向性は違うが、難易度は今作より高いので注意)
詳しく書くと盛大なネタバレになるため内容は最小限にするが、こんな「都市」の現状をなんとか打開しようとした一人の女性がいた。
人々に生きる希望を取り戻させようとしたのである。
その女性の下には、その理念に共感した多くの仲間が集まり、生きる希望を取り戻させる研究も順調に進んでいた。
が、色々起こった結果、「頭」の襲撃、女性の自殺等が重なり、一時は完全にその研究は潰れかけていた。
しかし、その研究を近くでサポートしていた一人の男がその研究を受け継ぎ、「都市」に生きる希望を取り戻させるために尽力する…
というのが Lobotomy Corporation のストーリーである。
結果として Lobotomy Corporation クリア時に目標は達成され、「都市」にそのものずばり、「光」と呼ばれる生きる希望そのものがばらまかれるのだが…
ここで登場するのが今作 Library Of Ruina の主人公の一人「アンジェラ」である。
Lobotomy Corporation 時代では、主人公の秘書を務めていたのだが、最後の最後で計画を裏切る形で、「都市」の希望足りえた「光」の半分を奪い取ってしまう。
アンジェラ側にも色々理由はあったにせよ、どちらにせよ希望の光を撒く計画は中途半端に実行、結果として「ねじれ」と呼ばれる新たな化け物を生み、「都市」を更なる混沌へと飲み込んでいく。
アンジェラはというと、前作の施設の跡地にて「図書館」を作り上げ、己の悲願を達成するために、ばらまいてしまった「光」の一部を再び集めなおすため、「光」を得た人々を「図書館」に招待していく…
と言った感じである。
なおこのように書くと、アンジェラがどう見ても悪役だが、彼女にも看過できない事情があるため、そこは実際にゲームをプレイして確かめて欲しい。
まあともかく、アンジェラは実際に「光」を集めるために、図書館へ人を招待していくのだが、そんな中、一切招待されていないのに突然「図書館」に侵入した人物に出会う。
これこそが今作主人公「ローラン」である。
突然の出来事に困惑したアンジェラは、ローランを質問攻めにしたり、両手足を吹き飛ばしたりしたものの、ある程度和解し、出たくても外に出られないローランをとりあえず自分の下で働かせることにした…ところが今作の話の始まりである。
長いのでまとめると、「都市」を変えようとしたが失敗し、それの尻拭い中である。こうまとめると語弊があるかもしれないが、一回半分撒いた「光」をもう一度集めなおしているのだからある程度は合っていると思う。
そして「光」を集めなおす過程で、訳あって超絶箱入り娘だったアンジェラは招待とローランを通じて「都市」を理解していくのだが、ここでの使い潰しっぷりがエグイ。
基本的に「図書館」に招待された人物は、試練という名目で図書館の「司書」と戦闘することになり、最終的に「図書館」に取り込まれ生きて外には出られない。
ちゃんとそれまでの過去や、それぞれのキャラごとにしっかりとストーリーがあり、熱い展開なども用意されているのにも関わらず、だいたい「図書館」に来たら出番終了である。
しかも「図書館」の中で死亡すると、その人物は本となり、その人物のもつ全ての情報が「図書館」で閲覧、使用可能になるというとんでもない機能付きである。
当然情報が全て開示されるため、その人物の戦闘経験や技術といったものまで「図書館」のもの。
つまり「図書館」に人が来れば来るほど、図書館は人々を取り込み、強く、凶悪になっていくのである。(先ほどの戦闘システム解説時に記載した装備とは、招待された人物そのもの、というわけである)
これを主人公サイドがやっているのだから、なんだか黒い欲望が止まらない。
「都市」の人物を使い潰して取り込み、情や愛といった人間らしい感情すらエサにして、強く強大になっていく今作の主人公サイドは、言うなればファンタジー世界で魔王側プレイをやっている気分にさせてくれること間違いなしである。
それでいて、世間知らずのお嬢様なアンジェラが、ローランと招待された人物との交流を経て、少しづつ成長していく様は、娘の成長を見守る父親気分でプレイできることだろう。
やっていることは間違いなくえげつないのに、なんだかそれだけで終わらないこの感じは本作の魅力の一つであると言える。
また物語を進めると分かってくるアンジェラや、謎の人物ローランの過去なども必見である。
「都市」がいかに歪んでいる場所なのか、嫌というほど教えてくれるだろう。
まとめ
総合してこのゲームは、独特なゲームシステムと、ディストピア世界で世界に敵対する「敵」ポジションを体感できるゲームであると言える。
特に、やって来る人物たちを取り込む、一見するとフェアな対決の場所である「図書館」という場所と、全くフェアではないゲーム性、そして招待された人物を撃破して得た新たな情報をエサに更なる大物を釣り、「図書館」が巨大に強くなっていく様は、ゲーム性と相まって一種の芸術である。
一度ハマると抜け出せない沼のような魅力がある作品であることは間違いない。
まだアーリーアクセスであるため、最後までプレイはできないものの、既にボリューム、クオリティ共にかなりのものであるため、一度プレイしてみてはいかがだろうか。